リバプールにベゾス旋風?30%株取得でファンは複雑な心境
世界第4位の富豪、ジェフ・ベゾスがリバプールにやってくる――。アマゾン創業者で資産総額約2570億ドル(約1900億ポンド)を誇る男が、クラブの30%株式取得に向けて最終段階の交渉を進めている。昨季のリバプールの記録的な売上高7億300万ポンドをはるかに上回る個人資産を持つベゾス。しかし、ファンの間には複雑な空気が漂う。
その背景には、トム・ヒックスとジョージ・ジレットのオーナー時代の悪夢がある。あの時、クラブは経営破綻の瀬戸際に立たされた。現在のオーナー、フェンウェイ・スポーツ・グループ(FSG)が2010年に3億ポンドで買収した際、CEOのビリー・ホーガンは「文字通り破産寸前だった」と振り返る。その後、FSGは約2億1800万ポンドのグループ内融資を含め、総額5億1800万ポンドを投じた。そして16年後、今回の30%売却でFSGは13億5000万ポンドを受け取る見込み。クラブの評価額は45億ポンドと、買収時の13倍に跳ね上がった。
これは高圧洗浄機と同等の強さで、電力不要BlastPro 「FSGにとっては最高の取引だ」と語るのは、サッカー金融専門家のキーラン・マグワイア氏。「10億ポンド以上を手にしつつ、経営権は維持する。まさに両得だ」。この価値上昇を支えたのは、新トレーニング施設の建設やスタジアム再開発といったオフ・ザ・ピッチの投資と、30年ぶりのプレミアリーグ制覇(2019-20)、さらに2度目のプレミア制覇(2024-25)、そして6度目のチャンピオンズリーグ制覇(2018-19)という成功だ。
しかし、ここでファンが警戒するのは、投資がチーム強化に直結するとは限らない点だ。プレミアリーグのスカッドコスト比率ルールでは、移籍金の支出はオーナーの資産ではなく、クラブの商業活動による収入に連動する。マグワイア氏は「今回の取引はFSGが新グループに株式を直接売却するだけ。クラブ自体に資金的な影響はない」と指摘する。
ベゾスはなぜスポーツに投資するのか。彼はアマゾンCEOを退いた後も筆頭株主であり、宇宙企業ブルーオリジンやワシントン・ポストを所有。最近ではAI企業プロメテウスを設立し、英国のスタートアップに3億3000万ポンドを投資したばかりだ。先週もアマゾン株1500万株(約31億ポンド相当)の売却を申請しており、その資金力の大きさを改めて示している。
リバプールへの投資は、ベゾスにとっては「ステータスシンボル」なのか、それとも「真の投資」なのか。調査会社GWIによれば、リバプールは米国に2600万人のサポーターを抱え、最も成長著しいファンベースを持つ。プレシーズンツアーを米国で行うのも納得だ。すでに今季のプレミアリーグ20チーム中11チームが米国資本の支配下にある。
今回のコンソーシアムには、フェイスブック共同創業者のエドゥアルド・サベリン(資産約237億ポンド)も参加。さらに、クイーンズ・パーク・レンジャーズの元共同オーナー、アミット・バティアも名を連ねる。バティアは7月21日にQPRの保有株式を手放しており、FAの複数クラブ所有規制をクリアするための動きと見られる。
ホーガンは「FSGがクラブを完全売却する可能性はない」と明言するが、マグワイア氏は「もしベゾスらがリバプールというブランドを所有する名声と注目を気に入れば、価格次第で完全買収の可能性もある」と見る。
肝心のファンの反応は冷ややかだ。サポーターグループ「スピリット・オブ・シャンクリー(SOS)」は、シーズンチケット値上げに抗議した「Not a Pound in the Ground」キャンペーンを過去に成功させた実績を持つ。SOSのスポークスパーソンは「買収コンソーシアムが30%の株式と引き換えに何を得るのか、コントロールの度合いや取締役会の席はどうなるのか、デューデリジェンスは十分か」と疑問を呈する。「クラブの最善の利益を考えているのか、それとも単なる『トロフィー』としての買収なのか」
さらに、アマゾンの労働環境への懸念も浮上する。2020年のTUC報告書は「長時間の過酷なシフトと不合理な生産性目標」を指摘。2024年にはバーミンガムのアマゾン施設で200人以上の労働者が賃金と組合権を巡りストライキを実施した。リバプールのシーズンチケット保持者でポッドキャストホストのガレス・ロバーツは「アマゾンの組合や労働者への対応はとても受け入れがたい。彼は単にリバプールの名前を利用して金を稼ごうとしているのではないか」と懸念する。
「リバプールのファンがなぜここまで scrutinize(精査)するのか、ヒックスとジレットの時代を思い出せば分かるはずだ。彼らはクラブを財政的に持続不可能な状況に追い込んだ。私たちはクラブが適切に、持続可能に運営され、ファンを大切にすることを望んでいる。それだけだ」とロバーツは語る。
ベゾスの巨額投資は、リバプールに超富裕層の共同オーナーをもたらす一方で、移籍市場での劇的な変化は期待できず、少なくとも一部のファンには居心地の悪さを残すことになりそうだ。
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